英語教育と脳力開発-第5回(最終回)

皆さんこんにちは!

 Take a chance! All life is a chance. The man who goes the farthest is generally the one who is willing to do and dare.
チャンスを生かせ!人生にはチャンスが満ちあふれている。普通、成功する人はチャンスを生かそうとする人だ。
デール・カーネギー(Dale Carnegie、米国の実業家、作家、ビジネスセミナー講師)

 

英語教育と脳力開発の最終回である第5回目は、無限の可能性の発見、そしてエピローグと続く。

無限の可能性の発見

目的・目標の確立(戦略)

『脳力開発指針集』・64ページを開くと次の指針がある。

「目的・目標の確立および持続というのは、脳の統一指令の根源になる働きをするものである。つまり、これがないと人間の頭は本格的に強力に働かないという特性を持っている。とにかく、ひとまとまりの行動(計画)においては、必ず目的・目標・方針等の方向をまずはっきりさせてから、それを達成するための手段・方法を具体的に考えていく、という習慣を確立する必要がある。」

私は、この指針に則って、N君の指導目的・目標を次の様に決めた。

[中学3年間で習得すべき単語・文法事項等を理解し、それらを正確に運用できること。]

指導の具体的方法・手段(戦術)

『脳力開発指針集』・65ページ(4)に、次の指針がある。

「ひとつの目的・目標に対し、いつでも手段・方法は必ず複数を考えるという習慣をつくる必要がある。目的と手段とは相対関係であるから、高次の目的から低次の目的にわたって、目的と手段の「相対列」ができ上る。そこで、この間に「レベル」という構造的関係が生じる。」

私は、この指針に則って、指導の具体的方法・手段を考えた。

指導としては、当然のことながら音声及び文構造の各中心点を習得できるようにするための集中訓練指導に重点を置いた。

Ⅰ、音声(アクセント)

(a)正確な音声を常に聴く習慣をつくる。

(b)各単語にアクセント記号をつけて音読する。

(c)文を構成する個々の単語をグループ化して発音する。

Ⅱ、文構造(語順)

(a)日本語を英語の語順にする。

(b)英語の語順になった日本語で知っている単語は英語にする。

(c)知らない単語は、辞書で確認し当てはめる。

(d)英語のルール(文法)に則って正しく修正していく。

(e)英語だけで実践してみる。

以上が、具体的方法・手段の主なものである。

これらの実践に当っては、N君本人に話をし、一人でやるときにも実行することを確認した。

さらに、私は『脳力開発指針集』・18ページ以降の指針「指導の本質は、相手の知らない事を聞かせてやる、教えてやるということではない。相手をその気にならせ、その方向に向かわせ、相手当人が自らの力で向上していくための原理(指針)の適用をわからせていくことが指導である。当人の進歩発展の主因は、あくまで当人自身にあるのであり、指導とはそれを伸長するための条件づくりである。時間をかけて、相手が変化しているだけの適切な条件を整備していく積み重ねこそ指導の要締である。本格的な指導の展開に際しては、理論と情熱と信念が不可欠であり、さらに確信が必要となる。」を、根底にN君の指導をすることとした。

行動・整理・反復

英語は、言語であるので内なる思いを正確・速やかに表現したり、相手の表現の意味を理解できなくてはならない。

このためには、ともかく「正確で適切な核要素・核動作」をしっかりと身につける(習慣となるまでの回路づくりをする)ことが、先行きの応用と創造的展開のための絶対条件である。最初の基礎づくりは、最も優れた内容を持ったモデルを模倣することから始めるのがよい。

私は、この観点から前述した具体的方法・手段を「すぐできるところからすぐ始める。」「易しそうなところから手をつけていくこと。」「一歩ずつ歩むべし。一口ずつ食べるべし。」の指針に則って、指導をすると共に、N君にもその様にして実践して行くことをアドバイスした。

私は、指導方法が自分だけの一人よがりにならない為にも、指導効果を高める為にも、指導記録を作成した。これには、「私及びN君の精神的姿勢の確立-3大項目」「指導事項」「英語の習得状況」等を記録し、習得した点はこれこれ、直すべき点はこれこれ・・・・・・といったように、適切・確実に指導でき、彼が確実に習得できるよう工夫を色々と加えていった。

私は、こんなふうにして、彼が常に迷うことなく安定して、自分で各中心点を完全に習得できるように指導し、彼の方はそれらを身につけるべく努力を積み重ねていった。さらに、各中心点相互のつながりが自然に無理なく習得できるよう、中学3年間の教科書をできるだけ反復音読し、時には、英文を写してみる努力をすることをアドバイスした。

これらの結果、各中心点が習得でき、さらに、難しいと思われた文法事項・発音が習得できた。

その結果、大いなる成果がでた。

私が、彼を指導した時間数は1ヶ月間で30時間、その他彼が自分で費やした時間数20時間、合計50時間によって達成された。

彼は、この50時間で英語の力を飛躍的に進歩させた。1ヶ月前は、1年生の事項にさえ、あやふやな部分があり、2年生、3年生の事項は論外であった。1ヶ月月後になると、中学3年間の事項をあらまし理解し習得していた。

自らの思いも、何とか英語で表現できた。K大附属高校の過去の入学試験問題で平均90%取得できるようになった。また、言語活動の4技能-読み・書き・話す・聞く(理解する)-が総合的な進歩を示した。

彼は、自分の英語力の進歩に驚き、本当のおもしろさを感ずるようになった。もっと複雑な英文を理解したり、自らの思いをもっと自由に表現したいと闘志を燃やしている。

また、英語を通して、同じ人間なのにこうも違った順序でものを言ったり発音したりする人間がいるのかという驚きと、異文化に対する興味がふくらんできた。

彼は、このたびのことは良い経験だったと言っている。英語力そのものが飛躍的進歩を遂げたことに気をよくし、さらに他の分野への自信がでてきた。実際、どんどん色々な事に挑戦し、前進している。生活面でも、学業面でも前と違ってどんどん進歩発展している。

高校の門をくぐった後も、今回の経験を大切にし、学業、生活等あらゆることに前向きに取り組み困難を克服してゆきたいし、できるのではないか。そう思いながら彼は入学式の日を待っている。

彼は、「脳力開発」の指針をいつのまにか身につけたようである。

エピローグ

桜の花咲く季節、4月初旬。

N君は、希望に胸ふくらませ、K大附属高校の門をくぐることだろう。

彼は、困難な状況を私の助言を参考にしながら、自らの力で克服し楽しみの人生に転換させていった。その過程で身につけた脳力開発を今後の人生に大いに適用させ、より一層素晴らしい人生を歩んで行くことであろう。

私達の歩んできた1ヶ月間は、決して平担ではなかった。時には、巨大な困難を前に挫折しそうになったこともあった。その挫折を支え、励まし、楽しみの人生へと導いてくれたのは脳力開発であった。

ある時は、厳格な父親の様に叱咤激励し、ある時は、わが子を柔らかい愛で包む母親の様に守り、励ましてくれた。

脳力開発は前回発表させて頂いた『仕事と脳力開発』に引続き、今再び、私にその素晴らしさと重要さとを再認識させた。

私は、教育に従事する人達が、その教育に脳力開発を適用していったらより一層素晴らしいものが展開され、教育を受ける人達の力を何十倍にも伸ばしていく事が可能になると確信する。私の勧めもあって、知人の教師数名が脳力開発を学び始め教育の場に適用させようと張り切っている。その成果も近い将来みられることだろう。

私は、今後とも、大いに脳力開発を使って自分を進歩発展させると共に、日本を含む世界中の人々や社会の水準を高め高度な社会発展をはかっていく事に貢献していきたい。その目的の為に、できるところから、一歩ずつ再び歩んで行こうと決心している。

N君本人がこの1ヶ月間を振り返りどう感じているのかを聞いてみたので、それを紹介する。

K大付属高校に見事に合格したN君の話

『僕は、中学に入学したころは、英語に最も興味を持って勉強していたが、だんだんその興味もなくなってきた。それは、だんだん、単語数が増えてきたり、文章も複雑になってきたりして暗記しなければならないことが沢山でてきたためなのだ。

また、学校では、文法事項が次から次と出てきて、文法のための文法を教えられている。たとえば、―不定詞の何とか用法とか、関係代名詞の主格か、目的格かを述べなさいとかー。とにかく英語を使うための文法ではない。

僕は、1ヶ月前まで誤りをおかすことを非常に恐れていた。学校の授業で、些細な誤りも先生は許さなかった。たとえば「3人称のSと複数のSを混同している」「不定詞の用法が違う、何回言ったら解るのだ」・・・・・・。僕は、質問に答えて謝るよりも、何も言わずにいた方が得だと思う様になっていった。それはなぜかと言えば、英語が出来ない生徒と思われるだけでなく僕は人格的に全くだめな生徒だと先生から思われることを恐れていたからだ。

この様な事で、僕は、英語に全く興味を失ったまま今年の1月を迎えた。

僕は、この1ヶ月間市村先生に英語を教えてもらってたいへん感謝している。

まず、先生は「失敗や誤りをすることを恐れるな。それは、前進のワンステップだ。」と教えてくれた。実際、僕が失敗や誤りをしたときなぜそうなったのか、僕自身が自分で見つけ出せる様にアドバイスをしてくれた。そして、誤った箇所は、繰り返し、繰り返し練習をして身につける重要さを教えてくれた。

僕は、一人で英語の問題をやっている時も、誤りを恐れず、誤った箇所は何回も繰り返して自分のものにしていった。この結果、だんだん英語が解るようになってきた。

また、英語という言語を常に、日本語と対比させながらその共通性と相異性を明確にしながら学んでいくことは、僕にとってすごく役立ったと思う。このことは、英語も日本語と同じで人間の使う言語であり、なにも恐れることはないんだということを解らせてくれた。

たとえば、英語でも日本語でも他の諸言語でも、与えられた語順のままに理解していくんだということ。

僕は、この様にあまりうまく表現できないけれど、英語に対する恐怖心がなくなり、入学試験でも良い結果がでた。

僕にとってこの1ヶ月間は、英語が好きになり得意科目になったこと以上に、人生に対する前向きな姿勢ができ、何ごとも少しずつできるところからやっていけば目標が達成できることが全身で理解できたことだ』

※本著作は、城野経済研究所発行の月刊「脳力」、1983年10月号に発表した論文を加筆訂正したものである。

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投稿者プロフィール

市村 修一
市村 修一
【略 歴】
茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。
日米欧の企業、主に外資系企業でCFO、代表取締役社長を経験し、経営全般、経営戦略策定、人事、組織開発に深く関わる。その経験を活かし、激動の時代に卓越した人財の育成、組織開発の必要性が急務と痛感し独立。「創造・挑戦・変化」をキーワードに、日本企業、外資系企業と、幅広く人財・組織開発コンサルタントとして、特に、上級管理職育成、経営戦略策定、組織開発などの分野で研修、コンサルティング、講演活動等で活躍。

2005年11月、 約10年連れ添った最愛の妻をがんで5年間の闘病の後亡くす。長年実践研究を妻とともにしてきた「いきるとは?」「人間学」「レジリエンス」「グリーフケア」をさらに学際的に実践研究を推し進め、多数の素晴らしい成果が生まれてきた。
この成果を社会に還元し全ての人がIKIGAIをもって各自の人生を歩み、よりよい社会づくに貢献するために本事業を立ち上げる決意をする。

2021年4月20日 株式会社レジクスレイ設立 創業者兼CEOに就任

【専門領域】
●組織文化・風土改革  ●人材・組織開発、キャリア開発
●グローバル人財育成  ●異文化理解
●東洋哲学・思想(人間学、経営哲学、経営戦略) ●グリーフケア
●レジリエンス(精神的回復力)
【主な論文/プレス発表】
「仕事と脳力開発-挫折また挫折そして希望へ-」(城野経済研究所)
「英語教育と脳力開発-受験直前一ヶ月前の戦略・戦術」(城野経済研究所)
「国際派就職ガイド」(三修社)
「セミナーニュース(私立幼稚園を支援する)」(日本経営教育研究所)

研修・コンサルティング・講演実績

【主な研修実績】

グローバルビジネスコミュニケーションスキルアップ ●リーダーシップ ●コーチング●ファシリテーション ●ディベート ●プレゼンテーション ●問題解決
グローバルキャリアモデル構築と実践 ●キャリア・デザインセミナー ●創造性開発 ●情報収集分析 ●プロジェクトマネジメント研修他

※上記、いずれもファシリテーション型ワークショップを基本に実施

【主なコンサルティング実績】

年次経営計画の作成。コスト削減計画作成・実施。適正在庫水準のコントロール・指導を遂行。人事総務部門では、インセンティブプログラムの開発・実施、人事評価システムの考案。リストラクチャリングの実施。サプライチェーン部門では、そのプロセス及びコスト構造の改善。ERPの導入に際しては、プロジェクトリーダーを務め、導入期限内にその導入。組織全般の企業風土・文化の改革を行う。

【主な講演実績】

産業構造変革時代に求められる人材
外資系企業で働くということ
外資系企業へのアプローチ
異文化理解力
経営の志
商いは感動だ!
品質は、タダで手に入る
利益は、タダで手に入る
共生の時代を創る-点から面へ、そして主流へ
幸せのコミュニケーション
古典に学ぶ人生
古典に学ぶ経営
論語と経営
論語と人生
安岡正篤先生から学んだこと
素読のすすめ
経営の突破口は儒学にあり
実践行動学として儒学に学ぶ!~今ここに美しく生きるために~
何のためにいきるのか~一人の女性の死を見つめて~
縁により縁に生きる
縁に生かされて~人は生きているのではなく生かされているのだ!~
看取ることによって手渡されるいのちのバトン
など