グリーフ(悲嘆)のプロセス 02

皆さんこんにちは!

Happiness depends upon ourselves.

幸せかどうかは心の持ち次第

アリストテレス(Aristotelēs、古代ギリシアの哲学者)

今日は、「グリーフ(悲嘆)のプロセス02」。

今日は、アルフォンス・デーケン(Alfons Deeken)イエズス会司祭、哲学者で上智大学名誉教授。のグリーフ(悲嘆)のプロセスをご紹介する。専門は、死生学。

アルフォンス・デーケンの12段階

1.精神的打撃と麻酔状態(shock and numbness)

愛する人の死という衝撃によって、物事を理解する機能が一時停止し現実感覚が麻痺状態になります。一種の防衛機制と言える。

2.否認(denial)

麻酔状態から脱すると、死を受け入れたくないという感情から死の否認が始まる。事故死や突然死の場合には、特にこの反応が顕著に表れる。自分の気持ちを落ち着かせるために、「ちょっと外出していてまた元気に帰ってくるはずだ」などの言動がみられる。

時間の経過と共に死が事実であることを認知し始めると同時に、それを否定する心理が大きくなり「嘘だ」「何かの間違いだ」など、否認の感情が激しくなりまた言動にもそのようなものが見られる。

3.パニック(panic)

身近な人の死に直面しそれを確信する一方で、否定したい感情も湧き上がり情緒不安定になる。「もう二度と会うことができない」という」寂しさ、悲しみ、無念さ、恐怖などが一気に押し寄せて押しつぶされそうになりパニックに陥る。集中力が失われ、日常生活にも支障を来すことになる。

4.怒りと不当感(anger and the feeling of injustice)

ショック状態が少し収まると、徐々になぜ自分だけがこんな辛い思いをしなければならないのだという激しい怒りが生じる。交通事故や建築現場での事故による突然の死の後では、この感情が強く表れます。また、病死の場合であっても、その怒りが医師や他の医療関係者者、その医療機関に向けられることもある。その怒りは、神や運命に向けられることもある。

この怒りの感情を外に素直に出せずに、自らの中にいつまでも止めていくと心身の健康を損ねてしまう。この怒りの感情を無理に自分の中に押しとどめずに、素直に外に向かって発散していくことは大変重要である。

5.敵意とルサンチマン(うらみ)(hostility and resentment)

周囲の人々や故人に対して敵意という形でやり場のない感情をぶつけてくる。特に、故人のそばに最後までいた医療関係者に向けられやすい。敵意を向けられた人は、過敏に反応せず冷静に受け止め、理解と思いやりをもって接することが大切である。

6.罪意識(guilt feeling)

悲嘆の行為を代表する反応である。自分の過去の行いを悔やみ自分を責める。亡くなった人が生きている内に、もっとこうしてあげればよかったとか、あんなことをしなければ病気にならずにもっと元気で生きていたかもしれないなどと、考えて後悔の念にさいなまれる。

7.空想形成、幻想(fantasy formation, hallucination)

空想の中で故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振る舞う。例えば、食卓には故人の分の食事を用意し、一緒に食事をするように振るまったりする

8.孤独感と抑鬱(loneliness and depression)

これは悲嘆の健全なプロセスの一つです。葬儀などが終わって日常に戻ると、言いようのない寂しさがこみ上げてきて深い悲しみに苛まれる。この悲しみ自体は健全な感情であるが、過去を振り返りとらわれていると前に進めない。孤独感が強くなりすぎると抑鬱になったりするので、早くこの時期を乗り越えることが必要であり周囲の援助を求めることも大切である。

9.精神的混乱とアパシー(無関心)(disorientation and apathy)

愛する人を失った空虚さから、生活目標を見失いどうしていいのか分からなく、すべてのものに無関心になり、無気力になる。これも悲嘆の健全なプロセスの一部であるが、積極的に乗り越える努力をする必要がある。

10.あきらめ-受容(resignation-acceptance)

自分の置かれている状況を「あきらか」に見つめ、辛いながらも勇気を持って現実を受け入れていこうとする努力が始まる。受容とは、運命に身を委ねていくという消極的姿勢ではなく積極的に現実を受け入れていこうとする行動である。

11.新しい希望-ユーモアと笑いの再発見(new hope-rediscovery of humor and laughter)

ユーモアと笑いは、健全な生活に欠かせないものである。それらが再びよみがえってきたことは、新しい生活への第一歩を踏み出そうという希望が生まれてきたということである。

悲しみが薄れるからといって、故人への想いが薄れるわけではない。故人との楽しかったこと、嬉しかったことの思い出を良き思い出としてしっかりと残っている。

12.立ち直りの段階-新しいアイデンティティの誕生(recovery-gaining a new identity)

この段階は、以前の自分に戻るのではなく、辛くて苦しくて悲しい苦悩に満ちた喪失体験、悲嘆のプロセスを通じて、新しいアイデンティティを獲得することを意味する。

この悲嘆のプロセスを、辛くて苦しくて悲しくても積極的に克服した人は、より成熟した人間へと成長することが出来るのである。

悲嘆は、現実を直視し能動的に立ち向かう課題であり、そこから何を学びどのように活かすかは各自の主体性にかかっている。

今日は、アルフォンス・デーケンの12段階について述べてきた。

次回も引き続き、他の専門家のグリーフ(悲嘆)のプロセスについて言及していく。

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